VIVANTで興味を持った人も多いモンゴル。あのドラマで見た、どこまでも続く草原とゲルの光景——あの世界には、”住所”がないんです。
国土の約70%に、道路も番地も存在しません。
じゃあ、どうやって郵便を届けるのか。救急車はどこへ向かうのか。
その答えが、たった3つの単語でした。

草原に住所がない、って聞いたとき……じゃあ郵便屋さんどこ向かってるんだ、ってなりました。
- VIVANTを観てモンゴルの暮らしや文化が気になった方
- 「住所ってそもそも何だろう」と考えたことがある方
- テクノロジーが社会の課題を解決する話が好きな方
「3つの単語」で地球上のどこでも特定できる、その仕組み
このシステムの名前は、what3words(ワット・スリー・ワーズ)。2013年にイギリスで生まれました。
やっていることは、発想がもう大胆すぎるんです。
地球上の全表面を、3メートル×3メートルの正方形のマス目に分割して、それぞれのマスにランダムな3つの単語を割り当てる。
ただ、それだけ。
たとえば、東京駅の丸の内口あたりは 「///limit.boss.event」 のような3語で表されます。
その3語をアプリに入力すれば、地図上のそのマス目にピンが立つというわけです。
組み合わせの総数は、57兆通り以上。
地球の全表面をカバーしてもまだ余ります。これ、ポエティックな表現じゃなくて、完全に計算上の事実なんです。
対応言語は50以上で、日本語にも対応済み。
英語版では約4万語のプールを使って組み合わせを生成していて、「音が似た3語」が隣のマスに来ないよう設計されています。
聞き間違いで別の場所に届く、という事故を防ぐための工夫まで入っているんです。
なぜモンゴルが、世界で最初に”公式採用”したのか


what3wordsを国の公式住所システムとして政府レベルで採用したのは、2016年のモンゴルが世界初です。
背景には、モンゴルが長年向き合ってきたリアルな問題がありました。
国土の広さは日本の約4倍。でも人口は約340万人。
そのうち約30%が、今も家畜とともに草原を移動しながら暮らす遊牧生活を送っています。
季節ごとにゲルを移動させる生活では、「固定された住所を持つ」こと自体が、そもそも生活様式と噛み合わないんですよね。
住所がないことで起きていた問題は、郵便が届かないだけじゃありません。
救急車が現場に辿り着けない。行政サービスが届かない。銀行口座が開けない——。
意外と勘違いしている人が多いんですが、これは「不便」というレベルじゃなく、命や生活に直結する社会課題だったんです。
モンゴル郵便公社(Mongol Post)はwhat3wordsと提携し、ゲルの住人が自分の居場所を示す3語を登録するだけで郵便が受け取れる仕組みを整えました。
スマートフォン一つで、自分の住所が持てるようになった。
それだけのことが、どれほど大きな変化だったか——想像すると、少しじんとします。



“住所を登録する”って、日本だと引っ越しの手続きのイメージしかなかったんですけど……草原でスマホ片手に登録する遊牧民の方を想像したら、なんか急に世界が広くなった気がしました。
💡 ちなみに:日本でも”住所が通じない場所”で活躍しています
「モンゴルの話でしょ?」と思いきや、日本国内でも活用が広がっています。
山岳救助や海難救助の現場では、「住所が存在しない場所」での位置共有ツールとして、消防署や海上保安庁が実証実験を進めています。
もっと身近なところでは、広いフェス会場やキャンプ場で「テントどこに張ったっけ」「駐車場のどのあたり?」を3語で共有する使い方も。
住所はあるけどピンが刺せないほど広い場所——そこでも、3メートル四方まで絞り込めるのが強みです。
まとめ
住所とは、「自分の場所を誰かに伝えるための約束事」です。
その約束が最初から存在しない場所に暮らす人々がいて、その問題を3つの単語が静かに解決した。
what3wordsの話は、そんな「インフラの再発明」の物語でもあります。
VIVANTで興味を持った人も多いモンゴルですが、あの草原の向こうには、私たちが普段まったく意識しない「住所があることの豊かさ」と、それをテクノロジーで補ったイノベーションの話が、静かに息づいているんです。



“住所って、当たり前にあるもの”だと思ってたんですよね、ずっと。この話を知ってから、Googleマップを開くたびに少しだけ、そのことを思い出すようになりました。




