江戸時代にも「カスハラ」はあった——クレーム代理人「出入り物師」という闇の職業

カスハラって、現代が生んだ問題だと思ってたんです。ところが江戸時代にもう、ちゃんとあったんですよね。しかも対策まで。

理不尽なクレーム、長時間の怒鳴り込み、過剰な要求——。 「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉が急速に広まり、いま企業や行政が本腰を入れて対策を始めています。

でも、人が集まって商売をしている以上、理不尽なクレームはずっと昔からあったはずですよね。 実際、江戸時代の日本にはクレーム交渉を専門に請け負う代理人業が存在していました。

その名も「出入り物師(でいりものし)」。 現代でいう弁護士とコンサルタントを足して、少し裏の匂いをさせたような——江戸の闇の専門家です。

この記事はこんな方におすすめです
  • カスハラのニュースを見て「昔はどうだったんだろう」と思った方
  • 江戸時代の意外な職業・文化に興味がある方
  • 「人間って昔からあんまり変わらないな」と感じたい方
目次

「出入り物師」とは何者か

江戸時代、商人同士・商人と武士・町人同士のあいだでは、日常的にトラブルが起きていました。 代金の踏み倒し、土地の境界争い、商品へのクレーム——現代と本質的には何も変わりません。

そこに目をつけたのが「出入り物師」です。 「出入り」とは江戸時代の言葉でもめごと・訴訟のこと。 つまり出入り物師とは、「もめごとのプロ」です。

依頼人の代わりに相手方と交渉し、必要なら奉行所への訴訟手続きまで一手に引き受けた、江戸のトラブルシューター集団。 これ、ほとんど現代の弁護士ですよね。

ただ、現代の弁護士と決定的に違う点があります。 資格も制度的な認可も、一切なかったんです。 公式には存在を認められていない、完全にグレーな職業でした。

それでも需要は絶えなかった。 商人にとっても武士にとっても、「交渉の場に慣れたプロ」を使うことは、合理的な選択だったわけです。

無資格なのに需要がある職業……現代にも心当たりがありすぎて、何も言えない。

江戸のクレームは、現代より「濃かった」かもしれない

出入り物師が活躍した背景には、江戸時代ならではの社会構造があります。

武士・町人・商人が複雑に絡み合う階級社会。 武士が商人に理不尽な値引きを迫る、町人同士が些細なことで長期の恨みを抱える——そういったトラブルは、日常茶飯事だったとされています。

しかも江戸時代の訴訟手続きは複雑で、奉行所への訴え方ひとつで結果が大きく変わりました。 知っている者が圧倒的に有利」な世界だったんです。 これ、意外と現代の法律トラブルと構造が同じですよね。

出入り物師はその「知識の非対称性」をそのままビジネスにしていました。 奉行所の手続きに精通し、担当役人との人脈を持ち、交渉の落としどころを熟知している。 依頼人はそのノウハウに対価を払っていたわけです。

中には、相手方の弱みを調べ上げて揺さぶりをかけたり、示談を有利に運ぶために情報を操作するような、かなりアグレッシブな手法を使う出入り物師もいたといわれています。 「代理人」というより「交渉屋」と呼んだほうが、実態には近いかもしれません。

そしてここが重要なポイントです。 こういった職業が成立していたという事実は、裏を返せば——江戸時代にも、対応しきれないほどの理不尽なクレームや争いが、日常にあふれていたということでもあります。

カスハラは、現代が生み出した問題じゃなかった。 人が集まって商売をするかぎり、ずっとそこにあり続けた問題だったんです。

💡 ちなみに:江戸には「訴訟マニア」もいた

出入り物師の話をするうえで、外せないのがこのエピソードです。

江戸時代、奉行所への訴えは庶民にも開かれていました。 そのせいか、些細なことでも訴訟を起こす「訴訟マニア」ともいうべき人物が、各地の記録に残っています。

中には、勝ち負けより「訴えること自体」を楽しんでいたとされる人物も。 現代のSNSで延々とクレームを投稿し続ける人の原型が、江戸時代にすでにいたと思うと——人間の本質って、数百年じゃ全然変わらないんだなと妙な納得感があります。

まとめ:カスハラは「新しい問題」ではなかった

今回わかったことを整理しましょう。

  • 江戸時代には「出入り物師」というクレーム・訴訟を代理する職業が存在した
  • 資格も公的認可もない、グレーな存在だったが、需要は絶えなかった
  • 知識と人脈を武器に、交渉から訴訟手続きまで一手に引き受けた江戸のトラブルシューターだった
  • その存在が成立していた事実は、江戸時代にも理不尽なクレームが日常にあったことを示している
  • カスハラは現代固有の問題ではなく、人と商売が交わる場所にはずっと存在してきた問題だった

「カスハラ対策」が叫ばれる今、江戸の人々も同じ問題に頭を抱え、独自の解決策を生み出していた。 歴史って、思っているより全然、身近なところにあるんですよね。

出入り物師、現代に復活させたら絶対流行ると思うんですよ。クレーム対応の代行サービス……あ、もうありますよね。やっぱり人間、何百年経っても同じことしてる。それがちょっと、好きです。

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この記事を書いた人

知的エンタメブランド『Lumoes(ルモーズ)』で、皆さんに「えっ、そうだったの!?」をお届けしている案内人のフクロウです。

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