ピアノを習ったことがある人なら、一度は弾いたはずのあのメロディー。
日本では”猫を踏んでしまった”おっちょこちょいな曲として知られていますが、海外でこの曲の名前を調べると、なぜか猫が消えます。
ロシアでは犬が踊りだし、英語圏では突然お箸が登場します。
いったい何が起きているのか。実はこれ、この曲が抱えるある特殊な事情から来ているんです。

同じ曲なのに、国が違うだけで猫が消えて犬になってる。もはや別の事件が起きてます。
- 子どものころ「猫踏んじゃった」を弾いた記憶がある人
- 音楽や言語の国際比較が好きな人
- 「なぜ同じ曲が国ごとに別の曲になるのか」が気になった人
なぜ「猫踏んじゃった」は国によってタイトルがバラバラなの?
この曲、誰が作ったか誰も知りません。
世界中で弾かれ、何世代にもわたって親しまれているのに、作曲者が正式な記録として残っていないんです。19世紀のヨーロッパが発祥とされていますが、楽譜が口伝えや非公式なルートでじわじわと広がっていったため、各国に渡るたびに「現地の感覚で」タイトルが付け直されてきました。
つまり”公式タイトルなし“のまま世界を旅してきた曲、それが「猫踏んじゃった」の正体です。
各国のタイトルを見てみると、もはや笑えてきます(諸説あり・地域差あります)。
| 国・地域 | タイトル | 直訳 |
|---|---|---|
| 日本 | 猫踏んじゃった | そのまま |
| ロシア | Собачий вальс | 犬のワルツ |
| スペイン語圏 | Chocolate | チョコレート |
| フランス | La Valse du Chat | 猫のワルツ |
| ドイツ | Katzenmusik | 猫の音楽 |
| 英語圏 | Chopsticks | 箸 |
日本だけが事故を起こしているのに、ロシアは犬、英語圏は箸。
全員、完全に別々の夢を見ています。
ロシアではなぜ「犬のワルツ」になったのか? 呼び名が変わるメカニズム


ロシアで「犬のワルツ」と呼ばれるようになった理由は、公式な記録が存在しません(諸説あり)。
有力とされているのは、「このメロディーがワルツのリズムなのに、どこかぎこちなく聞こえる」という感覚的なネーミングが定着したという説。犬がよたよたと踊っているような間の抜けさ、と形容されたとも言われています。
別の説では、ピアノを習い始めた初心者が繰り返し練習するため、「犬の遠吠えみたいにうるさい」という半ばお気の毒な皮肉が込められたとも。
英語圏の「Chopsticks(箸)」については、少しだけ記録が残っています。
1877年にスコットランドで出版された楽譜(アーサー・ド・ルッシュという名義、諸説あり)に、「指を揃えて、箸のように弾きなさい」という演奏指示が記されていたことから、その弾き方の指示がそのまま曲名として定着したと言われています。
曲の内容ではなく、弾き方の説明書がタイトルになったわけです。なかなかやばい由来ですよね。



作者不明のまま世界的ヒットって、ロイヤリティはどこに消えたんですかね……。まあ、もう誰もいないんですけど。取りに行ける人がいない。
💡 ちなみに:スペイン語圏で「チョコレート」と呼ばれる理由
スペイン語圏の一部では「Chocolate(チョコレート)」と呼ばれていますが、これも明確な由来の記録はなく諸説あります。
有力なのは、この曲のリズムがチョコレートを砕くときのリズムや、当時の民謡に似ていたという説。または「子どもたちがこのメロディーに合わせて”チョコレート”と歌いながら遊んでいた」という習慣から定着したとも言われています。
いずれにせよ、どの国でも「なんかこのメロディー、〇〇っぽくない?」という感覚が積み重なって、それぞれのタイトルが生まれてきたわけです。
まとめ:「猫踏んじゃった」は、世界中で勝手に名前をつけられ続けた曲だった
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 作曲者 | 不明(19世紀ヨーロッパ発祥とされる) |
| 日本 | 猫を踏んだ |
| ロシア | 犬がワルツを踊っている |
| 英語圏 | 箸の弾き方のこと |
| スペイン語圏 | チョコレート(諸説あり) |
| 共通点 | 公式タイトルなし・各国が自由にネーミング |
「猫踏んじゃった」は、誰も著作権を主張できないまま、各国の人々が「なんかこれ、〇〇みたいだよね」と好き勝手に名前をつけ、それが何世代も引き継がれてきた曲です。
ある意味、これほど民主的に世界へ広まった音楽も珍しいかもしれません。



次に誰かと一緒にピアノを弾く機会があったら、『ロシアでは犬のワルツって言うんだよ』とさらっと言ってみてください。ちょっとだけ話せる人間になれます。保証はしませんが。








