真夏の屋外で電話をしたとき、周りのセミがうるさくて「声が聞こえる?」と確認したこと、ありませんか。
あるいは逆に、電話の相手が「今すごくセミの声がすごいところにいるんだよね」と言っているのに、こちらには全然聞こえなかった経験は?
それ、気のせいでも通話品質の問題でもなく、携帯電話の設計そのものの話なんです。

『今どこにいるの?』『外だよ』——こんな会話、夏にやったことありますよね。そのとき周りでセミがうるさく鳴いていても、相手にはほぼ聞こえていないらしいんです。電話って、実はすごく大胆なデータ削減をしていました。
- 「電話でセミが聞こえない」を体感したことがある人
- 通話の仕組みに興味がある人
- 「そんな理由があったの?」という話が好きな人
携帯電話が「人間の声だけ」を通す理由
携帯電話の通話音声は、マイクで拾った音をそのまま送っているわけではありません。
データ通信量を減らすために、音声は「コーデック」と呼ばれる圧縮技術で変換されてから相手に送られます。そしてこのとき、人間の声帯が出す周波数帯(約300Hz〜3,400Hz)以外の音は、ばっさりカットされる仕様になっています。
これを「ナローバンド音声」と呼び、長年の携帯電話通話の標準規格でした。
人間同士の会話に必要な音の情報だけを残し、それ以外を削除することで、通信データを大幅に圧縮できます。電波の混雑を避け、通話を安定させるための合理的な設計です。
ではセミの鳴き声は、何Hz帯にあるのか。
- アブラゼミ:主要周波数 約4,000〜6,000Hz
- クマゼミ:主要周波数 約8,000Hz以上
どちらも通話の通過帯域(300〜3,400Hz)をはるかに超えています。つまりセミの声は、電話の「通す周波数」に最初から入っていないんです。
耳をつんざくような大合唱の中で電話をかけても、相手には「静かな場所から電話している人」に聞こえているかもしれません。
「ほぼ聞こえない」——でも完全に無音ではない理由


ここで一点、正確に補足しておきたいことがあります。
「セミの声が電話で完全に無音になる」と言いたいところですが、厳密には「大幅に減衰する」が正確な表現です。
理由はいくつかあります。
まず、セミの鳴き声はすべての音が高周波数帯にあるわけではなく、一部の倍音成分が低い周波数帯にも広がっている場合があります。また近年普及しているVoLTE(Voice over LTE)という通話規格では、通過できる周波数帯が最大7,000Hz程度まで拡張されており、従来より少し聞こえやすくなっています。
とはいえ、クマゼミのような高周波数のセミの声については、VoLTE環境でもほぼカットされます。アブラゼミも主要成分の大半は通過帯域の外にあるため、大幅に聞こえにくくなります。
「完全な無音」とまでは言えないものの、「現実とはかけ離れた別世界の音風景」になっていることは間違いありません。



VoLTEで少しは聞こえる場合もある、と知って試したくなってきました。でも試す方法が『セミのいる場所で電話する』しかなくて、夏限定の実験です。
💡 ちなみに:この仕組み、浮気の発覚を防いだ(かもしれない)
都市伝説的な話ですが、「外にいるのに室内にいると偽ろうとしたら、セミの声で場所がバレた」というエピソードは、実はほぼ起きません。
電話越しにセミの声がほぼ聞こえないということは、逆に言えば「外にいることが声で証明されにくい」ということでもあります。
もっとも、セミの声が聞こえなくても、周囲の環境音(風の音、交通音など)は低周波数帯を含むため完全には消えません。「バレるかどうか」は結局、別の音で判断されることになります。
まとめ——電話は「人間の声専用チャンネル」だった
- 携帯電話の通話は、人間の声帯の周波数帯(約300〜3,400Hz)のみを通す設計になっている
- セミの鳴き声の主要周波数(4,000〜8,000Hz以上)はこの帯域の外にあり、ほぼカットされる
- VoLTEなど新しい規格では通過帯域が広がっているが、クマゼミ等の高周波数の鳴き声は依然ほぼ聞こえない
- 「完全な無音」ではなく「大幅に減衰する」が正確な表現
電話は声を届けるための道具であり、声以外のものはどこかで削られています。
当たり前に使っているスマホの通話機能に、「人間の声だけを選び取る」という精密な設計が隠れていた——知ってから電話をかけると、ちょっと違って聞こえてきませんか。



夏に外から電話してるとき、相手には『静かな部屋にいる人』に聞こえてる可能性があるわけですよね。なんか不思議な感覚です。声だけの世界って、思ったより別世界だった。








