
お茶に塩……? 砂糖の入れ忘れじゃなくて、わざと? それ、もうお茶じゃなくない……?
そう思ったあなた、まったく正常です。
でもモンゴルでは、それが「正しいお茶」なんです。
2023年に大ヒットしたドラマ『VIVANT』でモンゴルの大草原に魅了され、 VIVANTで興味を持った人も多い現地の食文化。
今回はその中でも「え、それ本当に飲み物なの?」と思わず二度見してしまう、 モンゴルの国民的飲み物「スーテイツァイ」の正体に迫ります。
- 『VIVANT』を観てモンゴルの食文化が気になっている
- 「塩とバターのお茶」が信じられなくて確かめたい
- 明日の雑談や旅行前の予習に使えるネタを仕入れたい
スーテイツァイって何? 「ミルクティー」なのに、ほぼスープな件
モンゴル語で「スーテイツァイ(Сүүтэй цай)」は、直訳すると「ミルクティー」です。
……でも日本人のイメージするミルクティーとは、まったくの別物です。
作り方はこうです。
まず煉瓦のように固められたプーアル茶(黒茶)を砕いてお湯で煮出し、 そこへ牛・羊・馬などの家畜の乳をたっぷり加えます。
そして仕上げに、塩をしっかり効かせる。
家庭によってはバターや羊の脂(ラード)、 さらに炒った粟や干し肉まで加えることもあります。
これ、どう考えてもスープですよね。
実際に飲んでみた人の反応は、ほぼ全員が同じです。
「……コンソメ?」
脳が完全に混乱します。甘さのかけらもなく、塩気とバターの風味が口に広がる。
それでもモンゴルの人々はこれをどんぶり椀で1日に何杯も飲み、 主食に限りなく近い「飲み物」として毎日の暮らしに欠かせないものにしています。
「嗜好品としてのお茶」ではなく、「エネルギー補給のための飲み物」。
そう聞くと、少しだけ見え方が変わってきませんか?
なぜ「塩」なのか。過酷な草原が生んだ、必然の味


「わざわざお茶に塩を入れるなんて」と感じるのは、 食材が豊富な環境を当たり前だと思っているからかもしれません。
モンゴルの草原では、事情がまるで違います。
内陸部の気候は、夏は40℃超え・冬はマイナス40℃にもなる極端な大陸性気候。
遊牧民は家畜とともに広大な草原を移動しながら暮らしており、 新鮮な野菜や果物を手軽に手に入れる手段がほとんどありません。
そんな生活の中で慢性的に不足しがちなのが、ミネラル(塩分)です。
一方、家畜から採れる乳は豊富にある。
だから「乳+塩+茶」の組み合わせは、カロリー・塩分・水分を 一度に補える、草原のパワードリンクそのものだったわけです。
バターや脂を足すことでカロリー密度をさらに引き上げ、 厳しい冬の体温維持にも役立てていました。
「美味しいから生まれた味」ではなく、「生き延びるために最適化された味」。
そう知ると、あの塩気がちょっと違って見えてきますよね。
ちなみに、茶葉そのものは古くから中国との交易品として流通していました。
モンゴルの遊牧民が茶を通貨代わりに扱うほど重宝していたという記録も残っています。
「お茶を飲む文化」は中国から伝わったもの。
でも砂糖ではなく塩と乳で仕上げるスタイルは、草原での暮らしに適応した モンゴル独自の進化です。
💡 ちなみに:「お茶に塩」、実は世界中にある
これ、意外と勘違いしている人が多いんですが、 「お茶に塩を入れる文化」はモンゴルだけじゃありません。
チベットには同じくバター茶(ポタラ)があり、 やはり塩とヤクのバターを加えて飲みます。
中央アジアの一部地域でも塩入りミルクティーが根付いており、 世界的に見れば「甘いお茶」のほうが少数派かもしれないんです。
日本の緑茶だって、砂糖は入れませんよね。
「お茶=甘い飲み物」という前提そのものが、 実はかなり限られた文化圏の感覚だったりするんです。
まとめ
モンゴルの国民的飲み物「スーテイツァイ」は、 プーアル茶に家畜の乳・塩・バターを加えた、 日本人の感覚では「お茶風味の塩スープ」に近い一杯でした。
一見すると奇妙なこの組み合わせは、 極端な気候と遊牧という生活様式の中で、 ミネラル・カロリー・水分を同時に補う生存のための飲み物として生まれたもの。
「変な食文化」で片付けてしまうのは、少しもったいないですよね。
その一杯には、何百年もかけて草原を生き抜いてきた人々の歴史が、 ちゃんと詰まっています。



正直ずっと、モンゴルのお茶も甘いミルクティー系だと思ってたんですよ。まさか塩スープ寄りだったとは……。飲んでみたいけど、現地に着いて『え、これ?』ってなる自信がある。次も持ってきます。
家庭や地域によってレシピには差異があります。本記事は広く知られているスーテイツァイの一般的な作り方をもとに構成しています。






