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【第3話】夜の片隅で~蛍光灯の下で~

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1.夜の片隅で~コールセンターの夜勤明けに~
2.夜の片隅で~深夜の切なさに~
3.夜の片隅で~蛍光灯の下で~
【番外編】夜の片隅で~蛍光灯の向こう側~

深夜のコールセンター。蛍光灯の下、私は静かに彼を見つめていた。3ヶ月。いや、半年近くが経った今も、私の気持ちは変わらない。

「課長、お疲れさまです」

いつもの挨拶。でも、今日は少し違う。彼の目は、いつも以上に遠くを見ているように感じた。「山田さん、今日は早いですね」

彼は疲れた声で話しかけてきた。私は微笑んだ。「はい、今日は早番なので」

コーヒーを差し出す。いつものように。でも、彼の反応は今日は違った。

「水島さん、少し話があります」

その言葉に、私の心臓が一瞬、止まったかのようだった。

「実は、転勤することになりました」

彼の言葉は、まるで遠くから聞こえてくるようだった。地方の支社に。半年後には異動する。私の希望は、またしても遠ざかっていく。

「おめでとうございます」

精一杯の笑顔で答えた。でも、心の中は違った。なぜ、私の気持ちに気づいてくれないのか。なぜ、私の存在に気づいてくれないのか。

夜勤明けの彼は、いつものようにサウナへと向かっていった。私は遠くから、その背中を見つめるだけ。

数週間後。彼の送別会の席で。

「課長、本当にお世話になりました」

私は精一杯の笑顔で言った。彼は少し戸惑いながら、でも優しく微笑んだ。

「山田さん、あなたの仕事は本当に素晴らしいですよ。これからも頑張ってください」

それだけ。何の特別な言葉もない。私の心の中で、小さな希望の光は、静かに消えていった。

転勤の日。私は彼を見送った。

「気をつけて行ってください」

彼は軽く手を振り、去っていく。振り返ることもなく。

夜のコールセンター。蛍光灯は相変わらず冷たい光を放っている。私は、また一人、電話の受話器に向き合う。

この半年間、私は彼に近づこうとした。でも、結局は距離を縮められなかった。男性は、自分の心の壁を簡単には開かない。特に、深い傷を持つ彼のような男性は。

携帯を取り出す。彼のソーシャルメディアをチェックする。異動先の風景。新しい職場。でも、彼の表情は変わらない。相変わらず、どこか遠くを見ているようだ。

(仕方ないわね)

小さなため息とともに、私は深夜の仕事に戻る。

夜は、また静かに、そして冷たく過ぎていく。私の中の小さな恋心は、まるで蛍光灯の光のように、儚く消えていくのだった。

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