ファンタジー 児童文学

【児童向け】星をつなぐ時計台 ~時の見張り人の物語~

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茜色に染まった空が、古い時計台の尖塔を優しく照らしている。高さ50メートルほどのその建物は、小さな町クロノスバーグのどこからでも見えるランドマークだ。

12歳の少年トーマスは、いつものように放課後の時計台で過ごしていた。ここは彼の大切な居場所である。時計職人だった祖父が亡くなってからというもの、トーマスは毎日のように時計台に通い、巨大な歯車の手入れをしている。

「よし、これで今日のメンテナンスは終わりかな」

トーマスが古い歯車に油を差しながら呟くと、どこからか不思議な声が返ってきた。

「随分と丁寧な作業をするんだね」

驚いて振り返ると、大きな歯車の陰から一人の少女が姿を現した。トーマスと同じくらいの年頃だろうか。銀色の髪を後ろで束ね、深い青色の瞳をしている。見慣れない服装をしているその少女は、まるで古い絵本から抜け出してきたような雰囲気を漂わせていた。

「きゃっ!」 少女は足を滑らせ、危うく転びそうになる。とっさにトーマスが手を伸ばすと、少女の手が宙を切った。その瞬間、時計台全体に響くような鐘の音が鳴り響いた。

しかし、おかしい。時計台の大時計は3時15分を指したまま、完全に止まっているはずなのだ。

「あなたには見えるのね」 少女は床に腰を下ろしたまま、不思議そうにトーマスを見上げる。 「時計の本当の姿が」

「本当の...姿?」

「私の名前はリリア。時の見張り人の見習いよ」 少女は立ち上がると、ポケットから古びた懐中時計を取り出した。 「この時計台には、とても大切な秘密が隠されているの」

トーマスは首を傾げる。確かにこの時計台は町の象徴的な建物だが、特別な秘密があるようには見えない。ただの古い建物じゃないか。

「信じられないかもしれないけど」 リリアは真剣な表情で続ける。 「この時計台は、時間の流れを守る大切な場所なの。でも今、誰かがその流れを狂わせようとしている」

窓の外では、夕暮れの空が徐々に深い紫色に変わっていく。時計台の中で、大きな歯車たちが静かに佇んでいる。

「私たち時の見張り人は、時間の正しい流れを守る役目を担っているの。でも...」 リリアは言葉を詰まらせる。 「最近、時間がところどころ歪んでいるの。このままでは、大変なことになる」

「どんな大変なことが?」 トーマスは思わず聞き返した。

その時、突然の強風が時計台を揺らし、窓ガラスが大きく震えた。リリアは表情を引き締める。

「来たわ」

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